■犯罪予測システムCrime Nabi検証について
・期間:2022年8月1日〜 2022月9月30日
・対象:ブラジル連邦共和国ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテ市市警団、同市統合オペレーションセンター
当社は高精度・高速な独自手法を含む犯罪予測アルゴリズムをもとに、犯罪予測システム「Crime Nabi」を開発してきました。その予測結果を元に犯罪発生率が高い箇所を多く通る最適パトロール経路を策定し、業務計画、モニタリング、業務管理までをサポートする業務支援サービス「Crime Nabi MOBILE/WEB」をリリースし、自治体や政府機関、警備会社向けに提供してきました。
今回、ブラジル連邦共和国ミナス州ベロ・オリゾンテ市(以下BH市)、市警団と共に同システムの有効性を検証しました。BH市では近年、ケーブル盗難が急増しており、これが信号機の故障や工場や病院の一部の電力供給に影響を与える社会問題となっていました。そのため、今回の検証ではケーブル盗難を対象にしました。当社は、BH市・市警団の全面的な協力を得て、当社システム「Crime Nabi」の提供するパトロール業務支援サービスの有効性を検証し、効果的であることを示しました。
■検証の成果
ブラジル・ミナス州ベロ・オリゾンテ市警団と共に実施した犯罪予測システムCrime Nabiの有効性検証の結果、2ヶ月間のCrime Nabi活用期間で市全体のケーブル盗難事件数が活用前の2ヶ月間の543件と比較し69%減となる171件まで減少し、同システムの有効性が確認されました。
また、実証期間中にはパトロールのGPS情報をモバイルアプリケーションを通じて記録し、これを用いて更に精緻な効果検証を実施しました。下記はある地区の犯罪予測を活用したパトロールの防犯効果の事例です。左側がCrime Nabi利用前、右側がCrime Nabi利用中の全く同じエリアの犯罪発生マップです。緑が犯罪発生地点の集積、青がパトロールのGPS情報です。特に犯罪予測を活用しパトロールしたエリアで、PoC期間中は、PoC期間前と比較し犯罪が減少しています。
図1:Crime Nabi利用前・利用中の犯罪発生状況の比較(詳細な場所の特定を避けるため、表記の図はエリアの解像度を下げておりますが、実際には詳細にご確認いただくことが可能です。)
市全体でCrime Nabi利用エリアと非利用エリアの比較を検証したところ、Crime Nabiを活用した地域は非活用地域と比較すると犯罪抑止効果がおよそ2倍になり、同システムの有効性が認められました。具体的には、Crime Nabiを活用した地域の実証実験期間中の同事件発生数は実証実験期間前の21%まで減少した一方で、非活用地域の発生数は44%に留まり、比較すると効果がおよそ2倍になりました。
図2:Crime Nabi使用した地域の盗難発生数は実証期間前の21%まで減少し、非使用地域の44%と比較すると効果がおよそ2倍となりました。
この成果は2023年6月にBH市内で行われたセレモニーで非常に高い評価を得ました。
■ベロ・オリゾンテ市局長からのコメント
“今回の成果はパラダイムシフトともいえる。これまでの犯罪対策は、一人一人の国民の戦いとなるようなアナログ的な取り組みであった。技術を使うことで正確な犯罪予測ができるというのは大きなインパクトを受けたと感じている。”
ベロ・オリゾンテ市からのプレスリリース:
また、この成果の詳細についてはBH市と共同でブラジル、パラー州ベレン市で開催された「第17回ブラジル公安フォーラム年次総会」で公開されました。フォーラムにはブラジル全州の治安当局関係者が参加し、警察関係者を中心に反響を呼びました。
■今後
Singular PerturbationsとBH市は2023年度も業務活用に向けた実証実験の延長に調印しました。犯罪予測システムCrime Nabiの成果を受け、2023年度はカメラ監視業務に活用する実証実験を新たに開始いたします。
図3:BH市、市警団とのセレモニーの様子
図4:業務活用に関する議論の様子